行政協働研究所

About

行政協働研究所
〒105-0013
東京都港区浜松町2-2-15
info@ppcollab-lab.jp

お問い合わせはこちらから

官民協働 ケース・ファイル

コロナ禍の戦い① 那須塩原市のケース

私たちがコロナ禍という状況に向き合い始めて一年以上が経過。終息の目途が立たない中、人々の間には「なれ」や「自粛疲れ」といった様子もうかがえるが、そんな世の中の雰囲気に関わらず、自治体は一つ一つの対策を着実に行い続けていかなければならない。そうした各地の取り組みの中から、今回は那須塩原市のケースを紹介したい。

 

▼市民向けPCR検査の画期性

市民に対しPCR検査費用を補助する自治体は複数あるが、那須塩原市の取り組みは市民の不安解消と地域の感染拡大防止に対し、明確に合目的的な施策となっている。

 まず市民の負担は1,000円で、そして何回でも受けられるという気軽さ。コロナは感染への不安それ自体が人の心を蝕む。自分が「ヤバいかも知れない」というはっきりした不安のみならず、部活等大会に行ってきた子どもや自治会活動に参加した高齢者がいるなどの家庭に生じる〝なんとなくの不安〟に向き合う姿勢は、市民に頼もしさを感じさせるに違いない。

 また検査方法に工夫がある。家族(最大5人まで)のだ液を混ぜて検査するプール方式で実施し、陽性が出た場合、市の全額負担で再検査を行う。この方式を採るメリットは、コスト低減に留まらない。無症状陽性者をスクリーニングし、感染拡大阻止に対して具体的な効果がある。

 

▼感染症対策取組認証制度の先進性

ゴールデンウィーク中に政府が導入を全国の都道府県知事に通知した第三者認証制度、いわゆる「山梨モデル」を、基礎自治体として、いち早く取り入れていたということも特筆される。

 これはもちろん、どこの自治体でも可能な動きではない。制度の設計・運用には、高度に専門的な知識・経験が必要だが、自治体内にそうしたリソースが、常にあるわけではない。那須塩原市には、厚生労働省HACCP(ハサップ)の制度設計に携わった弁護士が市内におり、また我が国におけるエキスパートである国立大学教授との関係性もあった。

 さらにこうした認証制度におけるポイントであり、かつ同時にネックになるのは、審査員による基準適用のぶれだが、この点についても市内の企業に第三者監査の有資格者がおり、実際の審査に携わる市職員に対する教育訓練(審査のための研修)が可能であった。

 

▼施策立案・実施における〈戦略性〉

今後コロナ対策の主眼はワクチン接種へと移っていく。現時点における報道は「受けたいのに受けられない」というシーンばかりが強調されているが、今後はむしろ「受けたくない人をどれだけ減らせるか」ということが重要になってくる。

 集団免疫獲得には接種率70%の達成が必要といわれるが、すでに1億人以上が接種を終えたアメリカでも接種率は30%台(20214月時点)に留まっているという(53日のNHKニュース)。供給力ではなく、無理解や心理的抵抗感などが、接種率を上げる上でのハードルになるのだ。

 那須塩原市ではSNSや公民館でのヒアリング等を活用した市民アンケートを行った。それによりワクチン接種の意向について、年齢層による偏りがあることが判明した。これは今後どういった対応が必要か、あるいはどう情報発信をして啓発を行っていくかを検討するのに際して有効なエビデンスとなる。

---------- ---------- ---------- ---------- ---------- ---------- --------- ---------- -----

那須塩原市は昨年もいち早く、入湯税を財源に宿泊施設の従業員へのPCR検査を行うという施策を打ち、全国的にも注目が集まった。目標達成に向けて、常にスピード感を持ち、効果的な手法を取り入れていく同市の動きは今後も注視していきたい。

About

行政協働研究所
〒105-0013
東京都港区浜松町2-2-15
info@ppcollab-lab.jp

お問い合わせはこちらから
PAGE TOP